【まとめ】中国の新型コロナウイルスに関する最新情報【患者層・症状・最新研究結果】

論文紹介

こんにちは。科学者パライです。

今朝、医学雑誌「Lancet」に中国の新型コロナウイルス感染患者の初の臨床的特徴が報告されていて、これは重要やなぁと思ったので纏めていく!

目次!

最初に感染者41名の臨床特徴を纏める。

+αでややマニアックな基礎研究情報もあるよ!

因みに、私が一連のコロナウイルスニュースで注目したのは最後の薬剤開発の部分だ。良かったら最後まで読んでね。

感染者41名の臨床特徴のまとめ

本日のLancetに【中国武漢で2019年の新規コロナウイルスに感染した患者の臨床的特徴(Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China】というタイトルの報告がされた

新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染者41名の臨床的特徴に関する初めての報告だ。

ちなみにLancetは世界的権威のある医学雑誌であり情報源としては確かだろう。デマとか多いらしいので一応ね。

重要と感じたポイントを纏めていく。

感染者の特徴【年齢・性別・健康状態】

最初に年齢だ。横軸が年齢で縦軸が患者数だ。ピンクは集中治療室に入った人だ。

Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China より引用
  • 25~49歳が最も多い(49%, 20名)
  • 50~64歳が次に多い(34%,14名)
  • 患者の年齢の中央値は49歳
  • 2020/1/2時点では子供/青年の感染は無し(現時点では不明)

集中治療室に入った患者は、低酸素血症の為とのこと。

こちらの記事によると、死者の大半は高齢者で、糖尿病や肝硬変など基礎疾患を抱えていたそうだ。また、10歳の少年を含む若い感染者は既に退院しているとのこと。

年齢以外の特徴も箇条書きにしていく。

  • 感染者は男性が多い(73%, 30名)

更に、感染者の32% (13名)は下記に示すような健康問題を抱えていた。

  • 糖尿病(20%, 8名)
  • 高血圧(15%, 6名)
  • 心血管疾患(15%, 6名)

ちなみに感染経路は後述するが、41名の患者の66%(27名)は武漢の華南シーフード市場に行ったことがあったそうだ。

中国の長期休暇「春節」が始まり多くの中国人が日本にも訪れるだろう。41名の限られたデータだが、健康状態に問題のある方は特に注意して人込みを避けるなどした方が良いだろう。

感染者の症状(自分でわかるやつ)

主な症状としては下記が報告されている。

  • 発熱(98%, 40名)
  • 咳(76%, 31名)
  • 筋肉痛または疲労(44%, 18名)
  • 呼吸困難(55%, 22/40名, 発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日(IQR5.0-13.0)

また、まれな症状として下記が報告されている。

  • 痰(28%, 11/38名)
  • 頭痛(8%, 3/38名)
  • 喀血(5%, 2/39名)
  • 下痢(3%, 1/38名)

上記は自分でわかる症状だ。なんか体調悪いな、と感じたら上記症状が無いかチェックする事をおススメする。そして、お医者さんに正確に伝えよう。

感染者の症状(自分でわかんないやつ:血液検査とか)

以下は自分ではわかんない症状だ。お医者さんに任せよう。

  • 肺炎(全員、胸部CTで異常所見あり)
  • 白血球減少(白血球数:4×10の9乗/L未満、25%)
  • リンパ球減少(リンパ球数:1.0×10の9乗/L未満、63%)

また緊急治療室に入った患者と入らなかった患者の比較に関しても言及があるが専門知識がなくてよくわからん。原文をそのまま載せよう。

Prothrombin time and D-dimer level on admission were higher in ICU patients (median prothrombin time 12·2 s [IQR 11·2–13·4]; median D-dimer level 2·4 mg/L [0·6–14·4]) than non-ICU patients (median prothrombin time 10·7 s [9·8–12·1], p=0·012; median D-dimer level 0·5 mg/L [0·3–0·8], p=0·0042). Levels of aspartate aminotransferase were increased in 15 (37%) of 41 patients, including eight (62%) of 13 ICU patients and seven (25%) of 28 non-ICU patients. Hypersensitive troponin I (hs-cTnI) was increased substantially in five patients, in whom the diagnosis of virus-related cardiac injury was made.

Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China より引用

ICU患者は血漿中のサイトカイン(炎症性かな?)が多いのかな?わからんが。

という訳で患者層・症状について説明したよ!次は基礎研究について説明するよ!ややマニアックな領域に入るよ!

感染経路に関する研究結果

新型のコロナウイルスは動物からヒトに感染するようになったと考えられているが、Scientific Americanに報告された論文によると、現時点で提唱されているルートは

コウモリ→蛇→ヒトという経路が提唱されている。

感染患者から単離した新型コロナウイルスの遺伝子配列を解析した結果、このウイルスは過去に多くの感染者を出した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)および中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)とファミリーであることが解った。

世界保健機関(WHO)は、新しいコロナウイルス2019-nCoVと命名した。

【ちょっと補足】コロナウイルスについて【王冠ウイルス】

コロナウイルスのウイルス学的特徴に関しては、国立感染症研究所のHPが詳しい。

  • コロナウイルスは表面に突起がある。王冠(crown)に似ているためギリシャ語で王冠を意味するコロナ(corona)という名前で呼ばれる。
  • 中に1本鎖RNAを有する。このRNAを感染した細胞に送り込み自身を増幅する。
  • 遺伝学的特徴からα、β、γ、δのグループに分類される。
国立感染症研究所のHPより図は引用

コロナウイルスは空気感染し、主に哺乳類/鳥類の上気道および胃腸管に感染する。ほとんどは軽度のインフルエンザ程度だが、SARS-CoVとMERS-CoVは上気道と下気道の両方に感染し、ヒトに重度の呼吸器疾患やその他の合併症を引き起こす

新型ウイルス2019-nCoVも、SARS-CoVおよびMERS-CoVと同様の症状を引き起こし、重度の炎症反応を起こす。

補足は以上だ。

***

さて感染経路に話を戻そう。今提唱されているのはコウモリ→蛇→ヒトだ。

新型コロナウイルスの遺伝子を改正した結果、中国の2つのコウモリSARSとよく似ていた。従って、まず出発点としてコウモリが考えられる。

更に研究を進めたところ、コウモリウイルスの表面の王冠「クラウン」が突然変異する事によって、ヒトへの感染能力を獲得した可能性が見出された。

クラウンはウイルスが感染する際に、感染源の細胞を認識するのに重要だ。従って、クラウンのDNAコード配列が変異し、ヒトへの感染能力を獲得した事を示す研究結果は非常に腑に落ちる。

では、どの段階でクラウンの構造が変化したのか?

蛇の可能性が提唱されている。

研究者たちは、新型ウイルスが好むタンパク質のコードを分析し、鳥、蛇、マーモット、ハリネズミ、マウス、コウモリ、ヒトなど様々な宿主に観察されるウイルスのタンパク質コードと比較した。

その結果、新型コロナウイルスのタンパク質コードがヘビで使用されるものに最も類似していた。

蛇はしばしばコウモリを狩るそうだ。凄いな。飛ぶの?寝込みを襲うの?

さらに華南のシーフード市場にも蛇は売られていたそうだ。

よって、DNA解析と状況証拠的に【コウモリ→蛇→ヒト仮説】は有力そうだ。

一方で、これはまだ初期の研究段階で、謎も多い。例えばウイルスが蛇の様な冷血動物から、人間の様な恒温動物に感染移動した際にどの様に適応するかなどは謎だ。

【蛇仮説】を検証するには、蛇の中に新型ウイルスを見出すことが重要だが、シーフード市場は消毒され閉鎖されているため、研究サンプルが手に入らないという状況もある。

非常につらたんだ。がんばれ。

薬剤開発の展望:別次元のスピード

新型コロナウイルスに対する治療薬はない。炎症を抑制するための対症療法が用いられており、ウイルス自体をやっつける薬剤は存在しない。

私は製薬企業勤務だが、通常1つの薬剤を開発するのには、10年以上の年月がかかる。成功確率は一般的に3万分の1と言われる。

従って、こうした突発的な感染症に対して新薬を開発するのは非現実的だ。出来る事と言えば、今世の中に出ている薬の中に「効くものないかな~?」と探すのが関の山だろう。

今までの常識はこうだ。

だが、この状況が変化している。一連の中国コロナニュースで私が最も注目したのはScientific Americanに報告された記事のわずか数行だ。

この記事は連邦政府疾患局長のアンソニーさんが「ワイがチャイナのウイルスについてみんなの疑問に答えていくぜ~!」って記事だ。

その中に「ワクチンいつできんねん!?」という質問があって、アンソニーさんが「わからんけど、既に始めてるで!PI開始まで3カ月かな、上手くいけばね!」と回答している。

How long will it be before we have a vaccine for this virus?

We’ve already started to develop a vaccine. We got the [genetic] sequence from the Chinese. We’re partnering with a company called Moderna to develop a messenger RNA–based platform for a vaccine. We will likely have a candidate in early phase I trials for safety in about three months. That doesn’t mean we will have a vaccine ready for use in three months; even in an emergency, that would take a year or more. But we’re already on it.

Infectious Disease Expert Discusses What We Know about the New Virus in Chinaより引用

なんという別次元のスピードだ!

この革命を現実にしているのはRNAワクチンという技術だ。

という訳で、蛇足的にRNAワクチンについて展望を述べてみようと思う。蛇だけに。

RNAワクチンに関しては2019年Natureの記事が詳しい。この記事には私も大変興奮し、勢いでNoteの記事に纏めたりした。身近記事なので良かったら読んでね。2-3分で読めるよ。(良かったらNoteもフォローしてね!ツイッターも!)

体には免疫機能がある。

ウイルスや細菌の核酸(DNAやRNA)が体内に入ってくると【緊急事態発生!】という事である種の免疫細胞たちが活性化し、ウイルスや細菌をやっつける。

この仕組みを利用したのがmRNAワクチンだ。従来のワクチンは免疫系の活性化の為に細菌のタンパク質を用いていたが、mRNAを用いるのが新しい。

では、RNAを用いるメリットは何か?

【カスタムメイド可能、スピード、抵コスト】だ!

これが創薬現場に革命をもたらしつつある。

つまり、遺伝子配列さえ特定できればワクチンを作ることが出来る。NGSなど遺伝子解析技術は飛躍的な進化を遂げ、配列決定のハードルはかなり低くなっている。一方で従来のワクチンでは抗原を見出すのに時間がかかる。

因みに、上記の【新薬開発には10年かかる】というくだりは嘘ではない。が、実はワクチンは10年もかからない。従来のワクチンは研究から製造まで半年~1年だ。なんやねん、めっちゃ尾ひれつけてるじゃん!って言われそうだが、すみません、尾ひれつけました。だって…興味を引きたかったんだもん…

とは言え、それでもmRNAワクチンは早い。更に後述するように、mRNAワクチンは抗がん剤としてオーダーメード医療に使用される可能性も秘めている。抗がん剤の開発には10年以上かかるので、やはり10年をわずか数カ月に短縮するというのは嘘ではない。どっちやねん。

要は応用可能性が広いという事だ。

感染症への応用

実はmRNAワクチンは2013年の中国でのインフルエンザ流行においても活躍した。ノバルティスの研究者はわずか8日でインフルエンワクチン候補のmRNAを見出し、検証実験を開始した。驚異的なスピードだ。(※この検証結果は不明。調べればわかるがちょっと元気ない)

Moderna Therapeuticsという会社は、mRNAワクチンの開発を行っている。mRNAワクチンの課題は標的へのデリバリーだが、Modernaは脂質ナノ粒子コーティング技術を用いてデリバリーの問題を解決する。

新型コロナウイルスに対して、Modernaは既に取得した遺伝子情報を基に、RNAワクチンの開発を進めている。上手くいけば、三ヶ月以内にPIが開始する可能性がある。恐ろしいスピードだ。

がんオーダーメード医療への応用

ModernaのmRNA技術は【がんのオーダーメード医療】にも応用されている。

つまり、がん特有の遺伝子配列を特定し、免疫系を活性化してやることで、がんを選択的にやっつけまっせ!という発想だ。

がんは患者ごとに遺伝子変異がばらばらで大変だ。薬の効く効かないが問題た。がん治療に革命を起こしたといわれる抗PD1抗体ですら効く患者は2~3割だ。

じゃあ、患者ごとの遺伝子変異に合わせて薬を設計したらいいよねってのが【がんのオーダーメード医療】の基本発想だ。

Modernaの基本技術は以下の通りだ。

  • 患者の腫瘍サンプルおよび正常サンプル間のDNA配列を比較し、34の標的配列リストを作成する。
  • 見出した【がん特異的な配列】を基に治療用mRNAを作成する。
  • 脂質ナノ粒子でコーティングし投与できる形状にする。

この製造プロセスは1カ月だそうだ。

6月に開催された米国臨床腫瘍学会の年次総会において、ModernaはmRNA-4157ががん患者において突然変異特異的免疫応答を誘発できることを示すヒトの初めてのデータを報告した。また、免疫チェックポイント分子との併用によって、転移性がんを有する20名の参加者のうち6名で腫瘍が縮小したことを報告した。

ModernaとそのパートナーであるMerckは、7月より150名のランダム比較化実験を開始する。

時代の転換期を見ている気持ちだ。

勿論mRNAは万能ではない。まだ課題もある。箇条書きにする。

  • 有効性で失敗した例もある(ジカウイルスワクチン、狂犬病ワクチンなど)
  • 体の中の標的へのデリバリーの課題
  • 物流の問題:研究所から病院へと輸送する必要がある。

という訳で、最後の方はコロナウイルス関係ない話になってしまったが、要は皆さんもお気をつけてってこと。おわり。

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